2013年7月14日日曜日

貴婦人と一角獣展

またしても、のんびりしてるうちに会期終了間際になってしまい、駆け込んだのが金曜夜の国立新美術館。夜の美術館は独特の静けさがあって、なかなかよいものです。ところが今回は予想外の賑わい。ホールでジャズのライブがあったり、心地よい夏の夜のざわめきを味わいました。



■ 浴場跡の美術館


今回来日しているのは「貴婦人と一角獣」と題された6枚の連作タペストリー。このタペストリーが所蔵されているフランス国立クリュニー中世美術館はパリのカルティエ・ラタンにあります。実はいつも近くまで行くのですが、なかなか縁がなく、今回もまた行けなかった…と何度つぶやいたことか。

「貴婦人と一角獣」はこの美術館の目玉中の目玉。いつもそばにいたのに初めて会えるのが東京…となるとちょっぴり複雑な想いもあるのですが、近いうちに必ず訪れたい美術館です。というのも、この美術館はクリュニー公共浴場というローマ時代の浴場跡に建てられたもので、建物の雰囲気も堪能したいところです。

このタピストリーが、一週間働き続けて疲れた人々の飲み会の誘惑を遠ざけ、混雑した美術館に足を運ばせるのはなぜでしょう。


■ タピストリーが語る意味


タピストリーは6枚の連作で、いずれも1500年頃に制作されたものです。人間が世界を知るための「五感」を象徴しているといわれ、中世においては、Le Toucher「触覚」、Le Gout「味覚」、L'Odorat「嗅覚」、L'Ouie「聴覚」、La Vue「視覚」の順に次元が高くなると考えられていました(最後の「視覚」は聖書を読むことにつながり、もっとも高度な感覚であるとされました)。



Le Toucher「触覚」

貴婦人が一角獣の角に触れています。




Le Gout「味覚」

貴婦人が左手のオウムに砂糖菓子を与えようとしています。




L'Odorat「嗅覚」

貴婦人が花冠をつくる背後で、花の匂いを嗅ぐサル。




L'Ouie「聴覚」

小型のオルガンを弾く貴婦人。



La Vue「視覚」

貴婦人が持つ鏡を覗き込む一角獣。


■ 謎のタピストリー


そして、最後の6枚目が  Mon seul desir「我が唯一の望み」。貴婦人の背後の青い幕屋に記されたこの言葉は何を指すのか、様々な解釈がなされてきましたが、未だに謎に包まれたままです。この文言の左右には「A」と「I」の文字があることから、制作を依頼したル・ヴィスト家の当主アントワーヌ2世と彼の最初の妻ジャクリーヌを表す(中世においては「J」と「I」は区別されていなかった)ともいわれています。



Mon seul desir「我が唯一の望み」


そのような推測から「我が唯一の望み」は、「結婚」であるとか、「愛」であるとか、「心」であるとか、様々に論じられています。また、「五感」を表す連作をとりまとめるものとして、「第六感」を表す、ともいわれています。

それはさておき…


あなたにとっての「我が唯一の望み」は何ですか?




貴婦人と一角獣展

2013年4月24日(水)−7月15日(月・祝)  国立新美術館(東京)

2013年7月27日(土)−10月20日(日)  国立国際美術館(大阪)

http://www.lady-unicorn.jp


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