■ 世界三大名画って?
いつ誰が決めたのか定かではありませんが、一応そういわれているのが次の三つの作品です。
その① ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス』(1656年)
(プラド美術館/マドリード)
その② レンブラント・ファン・レイン『夜警』(1642年)
(アムステルダム国立美術館/アムステルダム)
その③ エル・グレコ『オルガス伯爵の埋葬』(1586年-1588年)
(サント・トメ教会/トレド)
ここにダ・ヴィンチの「モナリザ」が入るとか入らないとか、諸説あるようですが、
今回は、世界三大名画の一角を担う画家、エル・グレコの作品の中から、現在開催中(2013年3月21日時点)の「エル・グレコ展」に出展されている作品をご紹介します。
エル・グレコ『無原罪のお宿り』(1607年−1613年)
(サン・ニコラス教区聖堂(サンタ・クルス美術館寄託)/トレド)
■ アングル的手法
なんと、高さ3m越え!という巨大な作品です。
しかし、あれれ?こうして正面から見てみると、なんだかおかしな気がしますね。
中央に立つ女性の身体が異様に引き延ばされているではありませんか。
これはまさに、アングル的手法!(3月21日分「ルーブルの美女」ご参照くださいませ)
その通り。なぜ引き延ばされて描かれているかというと、この作品のサイズに注目。
これは元々、教会の礼拝堂を飾るために依頼を受けてグレコが制作したものです。
つまり下から見上げて鑑賞することを前提に描かれたのです。
極端に構図を引き延ばすことによって、画面上部の天井の光に吸い込まれていくような動きを与えることができます。
極端に構図を引き延ばすことによって、画面上部の天井の光に吸い込まれていくような動きを与えることができます。
しかし作品が制作された年代をみると、こちらの方がアングルより古い時代に描かれていますから、視覚的効果を狙って意図的に対象物を引き延ばしたり(時には縮めたり)、という手法はかなり前から存在していたようです。(ダ・ヴィンチの「受胎告知」(1472年-1475年)にもそのトリックが隠されています。)
■ この人は誰?
さて、こんなにも引き延ばされちゃったこの人は、誰でしょう。
古典的な西洋絵画には決まりごとがあって(むしろ決まりごとばっかり)、衣服の色や持ち物によって、鑑賞者はそれが誰であるかを特定することができます。いや、特定できるように描かなければならなかったのです。
持ち物は、アトリビュートまたは持物(じぶつ)とも言います。聖母マリアの衣服は赤×青、もしくは青と決められていますので、このお方はイエス・キリストの御母、聖母マリアであるとわかります。
ところで、この絵のタイトル『無原罪のお宿り』は、他でも耳にしたことがあるかもしれません。聖書に基づいたキリスト教絵画や神話をモチーフにした絵画の場合、同じテーマを複数の画家が描いていることがよくあります。ちなみに、無原罪とは、人間の男女の性的な営み(=原罪)なしにイエス・キリストを宿した聖母マリアの、生まれながらの聖性を讃えるカトリックの教義のことです。
『無原罪の御宿り(お宿り)』といえば、この絵を思い出す人も多いでしょう。実はムリーリョもこのテーマで様々なバージョンを製作しています。
■ 同じ題名の絵がある謎
ところで、この絵のタイトル『無原罪のお宿り』は、他でも耳にしたことがあるかもしれません。聖書に基づいたキリスト教絵画や神話をモチーフにした絵画の場合、同じテーマを複数の画家が描いていることがよくあります。ちなみに、無原罪とは、人間の男女の性的な営み(=原罪)なしにイエス・キリストを宿した聖母マリアの、生まれながらの聖性を讃えるカトリックの教義のことです。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『無原罪の御宿り』(1660年-1665年)
(プラド美術館/マドリード)
『無原罪の御宿り(お宿り)』といえば、この絵を思い出す人も多いでしょう。実はムリーリョもこのテーマで様々なバージョンを製作しています。
■ 怖い天使
さて、もう一度エル・グレコの絵に戻りましょう。聖母マリアの頭上に輪ができています。よ〜く見ると、小さい顔がびっしり。しかも身体がなくて顔に羽根が生えてる〜!こ、こわい。
このおびただしい顔、顔、顔の正体は、なんと天使なのです!
しかもかなり位の高い天使。
天使の世界は階層社会で、なんと9段階もの階層があります。
下から順に①エンジェルズ(天使)→②アークエンジェルズ(大天使)→③プリンシパリティーズ(権天使)→④パワーズ(能天使)→⑤ヴァーチューズ(力天使)→⑥ドミニオンズ(主天使)→⑦トロウンズ(座天使)→⑧ケルビム(智天使)→⑨セラフィム(熾天使)となります。
みなさんがどこかで耳にしたことのあるガブリエル、ラファエル、ミカエル、といった天使たちは②のアークエンジェルズです。
絵画においては①〜③の下級天使が圧倒的に登場回数が多く、特にアークエンジェルズは人前に登場する機会が多いせいか、人間の姿に羽根が生えた格好で表現されることが多いのが特徴です。だとすると、エル・グレコの絵の画面下にいる天使はアークエンジェルであるとわかります。(④〜⑥のいわば中間管理職はあまり絵画には登場しません)
上級天使のなかでも天使界のトップに君臨する⑧ケルビムや⑨セラフィムは、神に近い存在とされています。そのため、その姿が人間と同じであってはいけないのです。
よって、顔に羽根が直接生えた、なんとも奇妙な姿で描かれます。(ちなみに、ケルビムとセラフィムは描き分けられることがないため区別がつかないのも特徴です)
迫力の大作を、ぜひみなさんも堪能してみてはいかがでしょうか。
天使の世界は階層社会で、なんと9段階もの階層があります。
下から順に①エンジェルズ(天使)→②アークエンジェルズ(大天使)→③プリンシパリティーズ(権天使)→④パワーズ(能天使)→⑤ヴァーチューズ(力天使)→⑥ドミニオンズ(主天使)→⑦トロウンズ(座天使)→⑧ケルビム(智天使)→⑨セラフィム(熾天使)となります。
みなさんがどこかで耳にしたことのあるガブリエル、ラファエル、ミカエル、といった天使たちは②のアークエンジェルズです。
絵画においては①〜③の下級天使が圧倒的に登場回数が多く、特にアークエンジェルズは人前に登場する機会が多いせいか、人間の姿に羽根が生えた格好で表現されることが多いのが特徴です。だとすると、エル・グレコの絵の画面下にいる天使はアークエンジェルであるとわかります。(④〜⑥のいわば中間管理職はあまり絵画には登場しません)
上級天使のなかでも天使界のトップに君臨する⑧ケルビムや⑨セラフィムは、神に近い存在とされています。そのため、その姿が人間と同じであってはいけないのです。
よって、顔に羽根が直接生えた、なんとも奇妙な姿で描かれます。(ちなみに、ケルビムとセラフィムは描き分けられることがないため区別がつかないのも特徴です)
迫力の大作を、ぜひみなさんも堪能してみてはいかがでしょうか。
エル・グレコ展
4月7日(日)まで 東京都美術館にて
9:30~17:30( 金曜は20:00)入室は閉室30分前まで 月曜休館
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