今回訪れたのはルーヴル展ですが、そのサブタイトルは「地中海 四千年のものがたり」。
ルーヴル所蔵品を扱う場合、さすがにテーマを絞った内容にしないと、大変なことになります。なんといってもルーヴル美術館は所蔵点数38万点以上(2013年9月現在)。そのうち、あの迷子になりそうな館でさえ展示されているのは1割以下というからものすごい数です。
地中海はアフリカ、アジア、ヨーロッパを結ぶ広大な海域で、おまけに四千年も遡るとなると、途方もない話なのですが、メインは古代彫刻や遺跡系だとだいたい想像がつきますね(おそらく絵画はそれほどないということも…)。
モナリザが来るわけでもなく、かといってミロのヴィーナスがくるわけでもない今回の「ルーヴル展」。おそらく寡黙にならざるを得ない予感がするのですが、どんな作品に出会えますことやら...
アルテミス:信奉者たちから贈られたマントを留める狩りの女神
通称「ギャビーのディアナ」(100年頃)
今回のメインビジュアルになっている作品。
しかしなんとまあ、これが西暦100年頃の作品とは驚きです。布や髪の毛、腕の質感といい、そこから人類は1900年余り、何をやっていたんだ…というくらいの完成度です。
アルテミス、というのはディアナ(英語読みでダイアナ)と同一人物で、月と狩猟をつかさどる女神です。ギリシャ名がアルテミス、ローマ名がディアナ、となります。(まったく古代の神々はいちいちギリシャ名とローマ名があってわかりにくい…)
ルーヴルのアルテミス(ディアナ)といえば…
フォンテーヌブロー派『狩人としてのディアナ』(1550〜60年頃)
(※この作品は今回展示されていません)
ついこの作品を思い浮かべてしまうのですが。これは、フランス国王アンリ2世の愛人ディアーヌ・ド・ポワティエがモデルと言われています。ディアーヌはアンリ2世より20歳も年上だったというから驚き。初めて出会ったのが国王8歳、ディアーヌは27歳の人妻でした。名前はダイアナですが、カミラそのものという感じ。
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
『ハイディ:ギリシアの若い娘、イギリスの詩人バイロン卿による『ドン・ジュアン』の登場人物』(1870年〜72年頃)
古代遺跡コーナーを抜け、やっと親近感が湧いてきました。
スイス人画家リオタールもイギリス人外交視察団に同行し、16世紀から17世紀にかけて勢力を伸ばしていたオスマン帝国の魅力に取り憑かれ、滞在したコンスタンティノープルのトルコ人や外国人居住者の肖像画を数多く描きました。
ジャン=エティエンヌ・リオタール『トルコ風衣装のイギリス商人レヴェット氏と、クリミアの元フランス領事の娘グラヴァーニ嬢』(1740年頃)
お金持ちのコスプレごっこ(?)
それにしても、この長いわりに工夫のない作品名はどうにかならなかったものか。
そこから1世紀を経て、ドラクロワがアルジェやモロッコの風俗に触発されていわゆるオリエンタリズムとよばれる作品を多く残しましたが(7月9日付記事『ハノイ歴史博物館』をご参照くださいませ)、そのドラクロワの影響を強く受けたのが、シャセリオーです。
テオドール・シャセリオー『モロッコの踊り子たち:薄布の踊り』(1849年)
テオドール・シャセリオー『バルコニーにいるアルジェのユダヤ女性たち』(1849年)
今回の一番のお気に入り作品。
絵をずっと見続けていると、知らない画家が出てきてもその時代や作風が、知っている画家に似ていると気づくようになります。そこで調べてみるとやはり影響を受けていたとか、そのような気づきがあるのもまた絵画を見る愉しみでもあります。
シャセリオーの作品を初めて見たのはオルセー美術館でしたが、はじめはアングルの作品(3月20日付記事『ルーヴルの美女』をご参照くださいませ)かと思いました。ところが、別の作品を見ると、ドラクロワっぽい。そこで新古典主義からロマン主義へ鞍替えした形跡が見てとれるわけです。
まあ、ややこしい話はそこまでにしておきましょう。
パリのルーヴルは何度も訪れており、絵画のまわり方に関しては本が書けそうなくらい詳しいのに、いつもそこで時間を費やしてしまい、なかなか古代のコーナーまでたどりつかない私。おまけに気まぐれで古代コーナーに踏み入れると、急に方向感覚が狂いだし、行けども行けども同じ像の前に出てきてしまうという奇妙な現象が起こるのです(「ファラオの呪い」と私は勝手に呼んでいる)。
今回は、彫刻、工芸、絵画、素描・版画、古代オリエント、古代エジプト、古代ギリシア・エルトリア・ローマ、イスラームの8つの部門すべてからの出品で、広く浅く、という感じではありますが、つかみどころのない巨大なルーヴルの一部を垣間見るにはよい機会だと思います。
ルーヴル美術館展
- 地中海 四千年のものがたり -
2013年7月20日(土)−9月23日(月・祝) 東京都美術館
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