2014年8月21日木曜日

生誕200年 ミレー展 −愛しきものたちへのまなざし−


今年も暑い暑い夏がやってきました。ちょっと歩くだけで汗だくになるこの季節、つい外に出るのが億劫になってしまいますが、涼しい美術館で静かなひとときを過ごしてみませんか。

…といって、やって来たのは山梨県立美術館。ここは「ミレーの美術館」としてよく知られています。

現在、国立新美術館で開催中の「オルセー美術館展」に『晩鐘』が来ていることでも話題になっているミレーですが、今年はミレーの生誕200年にあたります。それを記念して、大規模な展覧会が、「ミレーの美術館」こと山梨県立美術館で行われているのです。

それにしてもこの日の甲府もめっちゃ暑かった!しかし、美術館の周りの緑の美しさに思わず暑さを忘れてしまいます。



甲府駅からバスで約20分、美術館は緑豊かな「芸術の森公園」の中にあります。




壁面には美術館のシンボルであるミレーの肖像が。






■ 歴史画から農民画へ


日本人にとかく人気のあるミレーですが、そのイメージの中心はやはり農村の素朴な風景と人々の暮らしを描いた作品にあるといえるでしょう。しかし、ミレーの初期の作品を見ると、聖書や神話に基づいた歴史画が多く見受けられます。これは画壇のヒエラルキーの頂点、すなわち歴史画家になることを意識していたと考えられます。


ジャン=フランソワ・ミレー『聖ステファノの石打ち』(1837〜39年頃)
(トマ=アンリ美術館/シュルブール=オクトヴィル)


画壇で最も権威あるローマ賞に二度応募し、いずれも落選。
ローマ賞を獲得すると、イタリア留学の権利が与えられました。


ジャン=フランソワ・ミレー『アラブの語り部』(1840年)
(トマ=アンリ美術館/シュルブール=オクトヴィル)


ドラクロワを彷彿させるオリエンタリズムの香り漂う作品。
ドラクロワは、ミレーが大きく影響を受けた画家でした。

■ 肖像画家としてのミレー


ミレーは生涯に120点余りの肖像画を残しました。しかしそのほとんどが親しい人々を描いた個人的な作品で、生活のために描いたものはごくわずかだと言われています。特に印象的なのは、ミレーの最初の妻、ポーリーヌ・オノを描いた2作品。

最初の作品は若々しさと輝く瞳が印象的です。しかしどこか憂いを含んだ雰囲気も感じられます。続く2枚目は、結核により死が迫ったポーリーヌを描いたもの。若く輝く魂と、病に冒された青白い肌の肉体が、生と死の狭間で拮抗する様が見る者の胸に迫ります。ポーリーヌは、この作品が完成した年に24歳の若さでこの世を去ります。

ジャン=フランソワ・ミレー『ポーリーヌ・V・オノの肖像』(1841〜42年)
(山梨県立美術館)



ジャン=フランソワ・ミレー『部屋着姿のポーリーヌ・オノ』(1843〜44年)
(トマ=アンリ美術館/シュルブール=オクトヴィル)



■ バルビゾン村での創作活動


最初の妻を亡くした後、ミレーは再婚し9人の子供をもうけました。次第に作品は、家庭や親子の愛、素朴な農村での生活をテーマとしたものになっていきます。

ノルマンディーの寒村に生まれ、愛情豊かな家庭に育ったものの、相次ぐ身内の死によって次第に一家は離散、故郷を離れてパリ、バルビゾン村へと移り住むうちにその作品はいつしか画家の郷愁が込められたものに変わっていくのです。

また、ミレーがそうした作品を多く描くようになった1860年代は、17世紀のオランダ風俗画が再評価された時代でもあります。

画家の内面と、時代の新たな潮流が共鳴して、今日私たちがよく知るミレー作品が誕生したのです。


ジャン=フランソワ・ミレー『子どもたちに食事を与える女(ついばみ)』(1860年)
(リール美術館/フランス)


母鳥が餌を与えるかのような心温まる場面。
子どもも顎を突き出し、必死で食事を受け取ろうとしています。
後ろには、家族のために働く父親の姿が。


ジャン=フランソワ・ミレー『種まく人』(1847〜48年)
(ウェールズ国立美術館/イギリス)


5点存在する油彩画の『種まく人』のうちのひとつ。
10月には『ボストン美術館 ミレー展』で、
ボストン美術館バージョンが見られるので、ぜひ比べてみましょう!


ジャン=フランソワ・ミレー『落ち穂拾い、夏』(1853年)
(山梨県立美術館)


想像より小さな作品ですが、精緻な筆使いで丁寧に描かれた作品です。
落ち穂拾いとは、地主がわざと大地に残した穀物を貧しい小作人が拾う習慣のこと。



美術館のすぐ向かいには、山梨県立文学館があります。



甲府に来たら絶対に食べたいほうとうの老舗「小作」。
美術館の目の前にもお店があります。




甲府駅前には、今話題沸騰中のNHK朝ドラ『花子とアン』の特別コーナーが。




村岡花子先生と記念撮影もできちゃいます。



あ〜、楽しかった!
帰りの列車の中では信玄餅アイスをいただきま〜す。





生誕200年 ミレー展 
—愛しきものたちへのまなざし—


2014年7月19日(土)—2014年8月31日(日)
山梨県立美術館(甲府)

2014年9月10日(土)—2014年10月23日(日)
府中市美術館(東京)

2014年11月1日(土)—2014年12月14日(日)
宮城県美術館(仙台)


            


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