2014年6月2日月曜日

星の王子さまミュージアム

■ 初夏のお出かけミュージアム


早くも30度を超える真夏日が続いた東京。この週末は、職場や学校を抜け出して、どこか遠くお出かけしたくなるほど本当にいいお天気でした。そこで、この季節の小旅行にオススメのミュージアムをご紹介いたします。

ずっと気になっていたものの、先日、初めて訪れた「星の王子さまミュージアム」。学生時代の友人たちと奇跡的に休みを合わせることができて、小旅行が実現しました。 

実は箱根に行こうと決まったものの、前日までノープラン。しかし頼もしい友人たちは、見事なチームワークで瞬く間に完璧な計画を練り上げ、私の迷ナビによる珍道中にもかかわらず、なんとか到着できました。(みんな、許しておくれ…)




エントランスでは王子さまがお出迎えしてくれます。



おっと、いきなり可愛らしいレストランの案内オブジェが。



吸い込まれるようにまず腹ごしらえ(笑)。


そして、まずは併設のレストランでランチ。平日、そして箱根という立地にもかかわらず、なかなかの賑わいです。様々なメニューに目移りしてしまいそうですが、ここはやっぱり『星の王子さま』の世界そのもののハンバーグでしょう!食後にはバラのハーブティーをいただき、優雅な時間を過ごしました。(バラは物語の重要な意味をもつキーワードなのですよ)

そうそう、NHKの朝ドラ「花子とアン」がものすごく面白い、との情報(実は私たちは主人公花子が通う女学校のモデルになった学校の卒業生)を得たのもこのとき。朝ドラは見ない派の私も、それからすっかりハマってしまい、おかげで毎朝8時にテレビの前にいる生活です。


…と、盛り上がっているうちに、またしても恐ろしいほどの時間が経ち、危うくここでランチして帰るだけになりそうになり、慌てて重い腰を上げました。



4月の中旬でしたが、まだ桜が咲いていました。
世界的なガーデンデザイナー吉谷桂子さんの手がける庭園も
見どころのひとつ。


■ 『星の王子さま』ってどんなお話?


「…ところで、『星の王子さま』って、どんな話だったっけ?」。じつは私、子供の頃に読んで大好きになり、展覧会に行ったり、もちろん本も数冊持っているし、今でも仕事で使ってるノートはMOLESKINの星の王子さま限定版、というくらいなのに、あらすじを聞かれると「えぇ〜と、飛行機乗りの主人公が砂漠に不時着して、そこに見知らぬ小さな王子さまが現れてぇ…」と、聞いても全く読んでみたいと思わない説明しかできなかったのです。


そこで、すかさず賢いわが友は、「大切なものは目に見えない、っていう話じゃなかったっけ?」ハイ、その通りです!


           

1990年、三越で行われた『星の王子さま展』の図録。
我ながらモノ持ちがよいなぁ。


           

MOLESKINの限定版ノート。
内側もカワイイんですよ!



でも、私のようにどんな話だっけ?という方もご安心を。館内ではあらすじと作者サン=テグジュペリの生涯を振り返る映像コーナーがあります。




敷地の中は、フランスの街並を模した建物が軒を連ねます。



まるでディズニーランドのアトラクションのよう。



おやまあ、こんなところに王子さまが。


 ■ 『星の王子さま』になったサン=テグジュペリ


『星の王子さま』は、第二次世界大戦中の1943年、フランスの作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによって、書かれました。ナチスの侵攻によって亡命を余儀なくされたサン=テグジュペリは、ニューヨークでこの作品を発表します。子供向けに書かれたこの本は、個性的でありながらもかわいらしい挿絵と共に、今も世界中の人々に読み継がれています。

ところでこのタイトル、原題は『Le Petit Prince(ル・プティ・プランス)』で「小さな王子」という意味なのですが、1953年に日本版が出されたときに、訳者の内藤濯(あろう)氏が名付けたものです。確かに「小さな王子」より夢があって素敵なタイトルですよね。

サン=テグジュペリは、1900年にフランスの商業都市リヨンの伯爵家に生まれました。子供の頃に、たまたま乗せてもらった飛行機への憧れが募り、やがて定期郵便飛行のパイロットになります。その傍らで小説を書き、『夜間飛行』(1931年)『人間の大地』(1939年)などの名作を生み出します。『夜間飛行』はゲランの香水の名前になったほどのベストセラーでした。

そうした大人向けの小説を描く作家が、久々に発表した作品が『星の王子さま』(1943年)だったのです。

この作品を発表した翌1944年、サン=テグジュペリはフランス空軍に戻り、偵察飛行のためコルシカ島から飛び立ったまま、未帰還となりました。

まさに物語の王子さまのように、ドラマチックな最期でした。



サン=テグジュペリが乗っていた飛行機のミニチュアがあります。


このミュージアムは、サン=テグジュペリの生誕100周年を記念して1999年に建てられました。様々な言語に翻訳されている『星の王子さま』の本や、サン=テグジュペリの愛用品、手紙の展示、そしてニューヨークで生活した部屋などが再現されています。


■ 大人のための物語


さて、子供の頃に読んで以来、もうずいぶん長い間忘れていた本を再び開く日がやってきました。ミュージアムから帰って以来、ずっとこの本を繰り返し読んでいました。

なんとも不思議な物語です。読むたびに、違う気づきがあるのです。だからこの物語は誕生から半世紀以上たった今も色褪せない魅力があるのでしょう。


物語は、サハラ砂漠に不時着したパイロットが、小さな王子さまと出会うところから始まります。「ヒツジの絵を描いて!」と王子さまに懇願され、こっちはヒツジどころじゃないんだよオイオイ、とパイロットは困惑しつつも、王子さまの難しい要求に何とか応えようとします。

そのやり取りの中で、王子さまは自分の星に大切なバラを持っていたけれど、わがままなバラと心を通わせることができず、決別してきたことが分かります。

子供向けの童話、という形を借りながらも、この王子さまとバラの関係は人間の男女関係そのものです。やさしい王子さまは何かとバラに尽くすのですが、思いが通じず、バラもまた王子さまのやさしさをわかっていながら素直になれず、すれ違ってしまうのです。バラは悲しい気持ちを堪えて、去って行く王子さまを追いかけず、お幸せになってね、と旅立つ王子さまを見送ります。

このバラにはモデルがいるようで、それはサン=テグジュペリの妻、コンスエロだと言われています。コンスエロはサン=テグジュペリとは三度目の結婚で、結婚後も自由奔放。一方、サン=テグジュペリ自身も複数の女性関係があり、夫婦はすれ違いの生活でした。

王子さまは、へんてこな大人たち(きっとみなさんのまわりにも当てはまる人がいるはず)やキツネ、ヘビなどと様々な出会いを重ね、自分の星を出てきた時よりも様々なことを学び、成長していきます。

とりわけこの物語の核となるバラとの関係において、王子さまは大切なことに気づき、毒蛇に自分を噛ませて、自分の星へ帰ることを決意します。

つまり「死」を以て魂の故郷に戻ることをあらわしているのですが、その素晴らしいラストシーンは、涙なしには読めません。



           
なんと3冊も持っていた私。
一番奥は中学生のときに買ってもらった英語版。
一番手前は2000年に刊行されたオリジナル復刻版。


思い出すとなぜかあたたかい気持ちになって、大好きだったことはよく覚えているんだけど、あらすじが思い出せない理由がよくわかりました。

これは子供ではなく、むしろ大人が読むべき物語なのです。

この本にはじめて出会ったときに子供だった私には、王子さまの苦しみやバラへの想い、またバラの悲しみも、へんてこな大人たちも、キツネが友情を求める気持ちも、パイロットの孤独も、すべて自分の外側にある世界でした。

だけど今は、すべて自分の知る世界として共鳴することが出来ます。王子さまがそうであったように、わたしにも生きる年月とともに重ねた「思い」があるみたいです。




帰りは強羅の足湯カフェ(http://www.naraya-cafe.com/j/footbath.html
で、足湯に浸かりながら極楽タイム。
自分で餡をつめて食べる最中は絶品!


『星の王子さまミュージアム』

所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原909
問い合わせ:0460-86-3700


開館時間:9:00〜18:00(最終入館17:00)
年中無休


※開館時間や休館日に変更がある可能性があります。

詳細はhttp://www.tbs.co.jp/l-prince/guide/にてご確認ください。




↓ ↓ いつもご愛読ありがとうございます!
   梅雨入りまでのお出かけのご参考になれば幸いです。






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