GWにオススメの美術展をもうひとつご紹介。ミスター・ポップ・アート、アンディ・ウォーホルの展覧会です。
昨年秋に国立新美術館で開催された「アメリカン・ポップ・アート展」にもウォーホル作品が多数出ていたので、記憶に新しい方も多いはず。
(「アメリカン・ポップ・アート展」についてはこちらの記事をご参照くださいませ→http://salondeangeaile.blogspot.jp/2013/10/blog-post_16.html?m=1)
しかし今回はウォーホル単独の展覧会。1950年代に商業イラストレーターとして成功を治め、その後美術界へ転身、58歳でその生涯を終えるまでの様々な作品を振り返ることができます。
グラフィック作品だけでなく、「ファクトリー」と呼ばれた彼のアトリエの再現コーナーもあります。部屋全体をアルミで覆ったかのような銀色の空間は、まさに無機質な工場さながら。2次元だけでなく、3次元でもウォーホルの世界を堪能できます。
特に必見なのは、「タイムカプセル」と名付けられた彼の遺品の数々。モノを捨てられない性格だったのか、自らの生きた軌跡を意図して残したものなのか、諸説ありますが、ダンボール箱569個から選りすぐられた約300点が展示されています。
中でも注目すべきは、日本文化に関する品々。浮世絵から地下足袋(!)まで、驚きのコレクションは必見です。
ところで、今回の展覧会のサブタイトルは、「永遠の15分」。何ともミステリアスではありませんか。
これは、「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう」というウォーホルの言葉に由来するもの。
ウォーホルは、数々の名言を残しています。しかしその言葉の数々は、なるほど!と思わせるものもあれば、彼の作品、いや彼の人生と同じくミステリアスなものも。だからこそ、半世紀以上経った今も人々の関心を集めてやまないのでしょう。
では、ウォーホルの名言をたどりながら、謎に満ちた天才アーティストの作品をさっそく見てみましょう。
■ 「僕のことが知りたければ表面だけ見ればいい。裏側にはなにもないから。」
アンディ・ウォーホルは1928年、東欧からの移民ウォーホラ家の三男としてアメリカ・ピッツバーグに生まれました。大学で絵画デザインを専攻したのち、ニューヨークで商業イラストレーターとして「ヴォーグ」などのファッション誌や広告を数多く手がけ、成功を収めます。
アンディ・ウォーホル『ブロッテド・ライン・ドローイング』(1950年代)
(アンディ・ウォーホル美術館/ピッツバーグ)
ブロッテド・ラインという独自の転写方法で描いた婦人靴の広告。
半世紀以上も前とは思えない斬新さに驚き。
イラストレーター、画家、映像監督、プロデューサー、と様々な顔をもつウォーホル。実は容姿にコンプレックスがあったとか。様々な仮面で本当の自分を覆い隠し、そして生まれたのがこの言葉なのかもしれません。
アンディ・ウォーホル『自画像』(1986年)
(アンディ・ウォーホル美術館/ピッツバーグ)
商業イラストレーターとして人気を集めたウォーホルは、1950年代の半ばに世界一周旅行に出かけます。この当時で世界一周できるほどの財を成すということは、大変な売れっ子だったという証です。
その旅行で来日したウォーホルは、京都の金閣寺の美しさに圧倒され、その影響か帰国直後に金箔を使った作品をいくつも残しています。
撮影者不明/東京観光記念写真(1956年)
向かって右から2番目がウォーホル。こうして見ると、天才アーティストというよりも真面目なサラリーマンという感じ。
しかし、はとバスも横文字にするとカッコいいですね。
アンディ・ウォーホル『天使』(1957年)
(アンディ・ウォーホル美術館/ピッツバーグ)
金閣寺の影響とも言われる黄金の天使。
■ 「なんでオリジナルじゃなきゃいけないの?」
1960年代に入ると、ウォーホルはそれまでの成功をあっさりと捨てて、アーティストへの転身を図ります。そこでキャンベル・スープ缶や、マリリン・モンローをモチーフにした有名なシルクスクリーン作品の数々が生まれます。
(これらの作品についての詳細は、コチラの別記事をご参照くださいませ→http://salondeangeaile.blogspot.jp/2013/10/blog-post_16.html?m=1)
今回の展覧会でも、もちろんこれらの代表作を見ることができます。
キャンベル・スープ缶は、アメリカ人にとっての日常です。しかし我々日本人には、初めから「ちょっとオシャレな缶詰」として映ります。キャンベル・スープ缶とアメリカ人の関係は、例えて言うなら、はごろもシーチキン缶と日本人のようなもの。
ある日、はごろもシーチキン缶が、反復され複製される巨大なシルクスクリーン作品になってアナタの目の前に現れたとしたら…。そりゃあ、「何じゃこりゃ??」となりますよね。
実は、このキャンベル・スープ缶のアイデアは、キャンベル社からのDMの図柄をそっくりそのまま模倣したものと言われています。
う〜ん、現代だったら様々な問題がおこりそうなエピソードですが、ウォーホルの手によって、キャンベル・スープ缶はもはやオリジナルを越えた存在になったことは確かです。
一点モノの作品と異なり、一度型を作ってしまえば簡単に複製することができるこの一連の作品群は、まさにアメリカの大量消費社会の象徴とも言われ、ウォーホルは一躍時代の寵児となりました。
キャンベル・スープ缶のみならず、マリリン・モンローやエリザベス・テイラー、毛沢東などの超有名人をモチーフにする一方、個人に向けた「注文肖像画」の制作にも取りかかります。
大量生産可能なシルクスクリーンとはいえ、一点モノであるということが顧客を喜ばせるということも熟知していたウォーホルは、一枚の写真をベースに様々に彩色した別バージョンを作成し、これが大成功を収めます。
アーティストにして敏腕営業マンの顔をも垣間見ることができます。
アンディ・ウォーホル『坂本龍一』(1983年)
(アンディ・ウォーホル美術館/ピッツバーグ)
坂本教授、わ、若い!
ワインの粗品カレンダー用に作られたもの。
アンディ・ウォーホル『マイケル・ジャクソン』(1984年)
(アンディ・ウォーホル美術館/ピッツバーグ)
この衣装、どの曲のだか、すぐわかりますね。
アンディ・ウォーホル『アレサ・フランクリン』(1986年)
(アンディ・ウォーホル美術館/ピッツバーグ)
クイーン・オブ・ソウル、アレサの肖像。
思わず頭の中を「respect」が流れます。
■ 「謎を残したいんだ」
意図があるようでいて、なく、ないようでいて、ある。ウォーホルの作品への感想です。見れば見るほど、知れば知るほど、その謎は深まるばかり。
この自画像のように、迷彩に素顔を隠した天才は、謎を解くように鑑賞者に誘うのです。
僕を、解けるものなら解いてごらん、と言わんばかりに。
アンディ・ウォーホル『自画像』(1986年)
(アンディ・ウォーホル美術館/ピッツバーグ)
アンディ・ウォーホル『広告:アップル』(1985年)
(アンディ・ウォーホル美術館/ピッツバーグ)
そして今日も私はこのリンゴの世話になるのであった。
■ 「アンディ・ウォーホル展」おすすめミュージアム・グッズ
「アメリカン・ポップ・アート展」で2000円のブロックメモを購入するという暴挙(?)に出た私は、今回は自粛…の予定が、買ってしまったんだな、やっぱり。
キャンベル・スープ缶のクリアファイルは内側がメタリックでカッコイイ!
マリリン・モンローのはダブルクリア・ファイルになっていて、内側はモンローづくしです。
チケット・ホルダーは仕切りがついていて、めっちゃ便利!
アンディ・ウォーホル展
永遠の15分
永遠の15分
0 件のコメント:
コメントを投稿