■ ミュージアムショップの誘惑
国内外を問わず、美術館に行くと必ず立ち寄るのがミュージアムショップ。ポストカードはもちろん、ノートや雑貨など、気に入ったものは値段もろくに見ずに片っ端から買う私(レジでびっくりする金額になることも…でも買う)。おまけにポストカードやファイル類は使う用と保存用と2枚ずつ買います。
ミュシャ展でゲットしたものたち(ごく一部)
ルーブルで買い集めた『グランド・オダリスク』グッズ
しかし、だんだんそれだけでは満足できなくなり、ここ数年日本の美術展でまず先にチェックするのが、複製画の販売コーナー。
ミュシャ展で購入した『ジスモンダ』
同じく『椿姫』
複製画といっても今回のミュシャ展ではさまざまなランクがあり、限りなく本物に近いリトグラフなどは数百万でしたが、上の2点は額装でなんと1点あたり5千円程度。確かに本物とは大きさも迫力も全然違いますが、雰囲気を楽しむには充分満足です。
■ 気分によって陳列替え
こうして集めた複製画の数々は、季節や気分によって掛け替える楽しみがあります。
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 『ムーラン・ルージュのラ・グーリュ』1891年
こちらはミュシャに先駆けること数年、パリで売れっ子だった元祖グラフィックデザイナー、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの代表作。本物(といってもポスターなので、オリジナルは複数存在するはず)を仮にパリのムーラン・ルージュに飾られているものとすると、こちらはかなり色鮮やかなのですが、大胆な構図やレタリング(飾り文字)が斬新で、お気に入りのひとつ。
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック『イーゼル前の漫画的自画像』
個人的な招待状や署名代わりに描かれたペン画の複製。
ロートレックは、その名からも分かるように南仏の由緒ある伯爵家に生まれました。しかし、先祖代々近親婚を繰り返したことによる遺伝的疾患によって、骨が脆かった上に少年期に二度にわたり足を骨折したため、足の成長だけが止まってしまうという悲運に見舞われます。
こうした自らの身体的特徴をやや自嘲的に、ユーモアを交えて描いたのが、上の素描です。ロートレックは、パリの「ムーラン・ルージュ」をはじめさまざまな酒場やダンスホールなどに入り浸り、そこに生きる娼婦や踊り子を数多く描きました。
スター女優の一瞬の歪んだ表情をも捉え、作品にしてしまう(当然、彼女は怒ってクレームをつけた)ほどの才能の持ち主で、その点においてモデルをひたすら美しく、神々しく描くミュシャの表現とは対極にあるといえます。
しかし、皮肉に満ちた表現の裏には、世紀末のパリで今日を必死に生きる社会的弱者に対するあたたかい視線を感じます。貴族の子息として生まれながら、身体的な不遇を味わわなければならなかった自らの運命を、彼女たちに重ねていたのかもしれません。
このあたりのエピソードをふまえて、高級娼婦サティーンを演じるニコール・キッドマンがこの世のものとは思えないほど美しい映画「ムーラン・ルージュ」をご覧になると、所々に出てくる小男(Petit Homme)が、偉大なる芸術家(Grande Artiste)トゥールーズ=ロートレックであると気づくはず。
ちなみに、映画の中に出てくる緑色の酒は、アブサン。現在流通しているアブサンとは比べものにならないくらいのアルコール度数で、中毒患者が続出したため後に製造禁止になりました。(アブサンはドガの絵にもよく出てきます)そのアブサン中毒(梅毒という説も)によって、小さいが偉大な芸術家は36歳の若さで生涯を閉じました。
…上の素描は、我が家のトイレにて随時公開しております…。
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では、トイレに潜り込むためにはどうやったらいいのでしょうか…。
返信削除...ウチくる!?
返信削除潜入???(爆)
削除それより、この連載を毎日楽しみにしてます。
今後も楽しませてください!
何より嬉しいお言葉、ありがとうございます~!!
返信削除Joeさんのカッコいいブログにはまだまだ及びませんが、これからもがんばります☆